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22 April. 2016

コラム「超人探訪記」第15回 「1971年晩秋は超人文化の結節点」

文:氷川竜介(アニメ特撮研究家)

 60~70年代の「テレビまんが」を研究すると、製作者たちの動きの迅速さに驚かされる。1971年初頭に「第二次怪獣ブーム」が始まった同年、晩秋にはブームをさらに加熱させる事件が世を騒がせた。

 ファミリー枠の頂点・日曜7時の放送枠に、ふたつの特撮ヒーロー番組が激突したのだ。1週間先行したのは11月28日放送開始の宣弘社作品『シルバー仮面』で、等身大ヒーロー番組として始まった。翌週12月5日放送の『ミラーマン』がこれを追撃。これはウルトラマンから続く「巨大ヒーロー対怪獣」を主軸にした円谷プロダクション作品であった。前者は翌年2月6日放送の第11話から『シルバー仮面ジャイアント』と改題して巨大ヒーローものに路線変更し、半年の第26話で放送終了。全51話と1年間続いた『ミラーマン』に軍配があがったとされている。
 
 ここに超人文化の「結節点」をみることができる。『シルバー仮面』の実制作は、同じTBSタケダアワーの『ウルトラセブン』(68)のスタッフが再結集した日本現代企画とコダイグループだった。その枠は『ウルトラQ』直前まで時代劇『隠密剣士』(62)を放送。初の実写特撮ヒーロー『月光仮面』(58)で人気を博した大瀬康一主演による時代劇で、いずれも宣弘社作品である。『隠密剣士』はメイン脚本家・伊上勝の痛快なストーリーテリングで忍者ブームを起こし、4年間継続した。直後のウルトラマンが光線技という秘術を尽くして宇宙忍者バルタン星人たちと戦う構造も、実は放送枠的に継続性のあるものであった。
 
 と考えてみると、『シルバー仮面』は『仮面ライダー』(やはりメイン脚本家は伊上勝)のヒットが呼び水となった「仮面もの」である点含め、実に多様な伝統が接続された特撮超人なのである。その一方で同作は、今で言うハイターゲットの挑戦的な異色作でもあった。佐々木守脚本、実相寺昭雄監督で幕を開けるシリーズは、リアリズム重視の青春彷徨ものだ。地球へ密かに潜入した宇宙人たちと苦闘する主人公・春日兄弟の心情は、誰にも理解されない孤独なもの。そして『ミラーマン』もまた、宇宙からの闇の存在インベーダーと戦うヒーローを描いたダークな侵略SFだった。両番組とも苦い味わいに充ちた時代性を反映していた点は見逃せない。
 
 そして『ミラーマン』という巨大特撮ヒーローが一時的な覇者となったものの、その放送枠は翌年、アニメにとって代わられる。その新番組とは、70年代中盤以後の児童TV文化をロボットアニメブームに染めあげる元祖『マジンガーZ』(72)のことだ。TVにおける超人文化は、まさしくこの年代・この時間枠を舞台に、大転換期を迎えていたのだった。

第15回 「1971年晩秋は超人文化の結節点」

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