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15 April. 2016

コラム「超人探訪記」第14回 「世情の暗転と特撮の逆襲」

文:氷川竜介(アニメ特撮研究家)

 第2シーズン初のエピソード、第14話「11月の超人達」は神化46年10月から11月にかけての事件である。神化43年10月の新宿擾乱(第13話)を契機に爾朗が超人課を去ってから3年、世情は大きく暗転していた。
 
 現実世界の西暦1971年は、「第二次怪獣ブーム」の幕開けである。スポ根ブームの影響で一度衰退した特撮ヒーロー番組。だが、同年1月からのTV特撮『宇宙猿人ゴリ』(後に『スペクトルマン』と改題)から大逆襲が始まる。宇宙から来た悪の科学者ゴリ博士が、次々と地球へ公害怪獣を送り込むという設定の同作は、裏番組だったスポ根の代表作『巨人の星』を視聴率で打倒したのである。

 この年、大気、河川、海などの自然環境は工場の出した廃棄物で汚染され、大衆は「公害問題」で生命の危機を感じながら生活していた。1960年代の高度成長期を支えた科学技術と、それを推進してきた国家や企業などのイメージは大きく反転していたわけだ。そんな中、同年4月から『帰ってきたウルトラマン』と『仮面ライダー』が続いてスタートし、特に後者は空前の「変身ブーム」を巻き起こすことになる。1966年の『ウルトラマン』による「第一次怪獣ブーム」とは、5年の隔たりがある。対象年齢層も未就学から小学校低学年向けにリセットされ、中学生以上になったかつての視聴者の大半は「卒業」していた。

 こうしてメイン視聴者は世代交代した――と言いたいところだが、話はそうシンプルではない。「何か新しいものを」という作り手たちはダークな世相への怒りを触媒に意欲を燃やし、心に突き刺さるような作品群を打ちだし始めたからである。代表例が『帰ってきたウルトラマン』の通称「11月の傑作群」だ。秋口に放送された回に挑戦的なテーマやストーリーが際だち、観るものを瞠目させた。そして筆者のように当時中学2年生でその衝撃に遭遇した人間は、「卒業」の機会を逸して生涯ずっと想いを引きずることになってしまう。実際、この「11月の傑作群」にしても数年後の同人誌活動から生まれた造語で、それが70年代後半に商業誌へ転用されたものだ。

 実は11月限定ではない等、異論の多い用語でもあるが、しかし造語でしか語れない何か熱い現象がこの時期に発生し、心に焼きついたことだけは間違いない。こうした「転機」が「神化世界」での大転機にも影響している可能性がある。実はその11月には別の特撮番組も問題作として登場しているのだが、詳細は次回に譲ることとする。

第14回 「世情の暗転と特撮の逆襲」

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