21 December. 2015
コラム「超人探訪記」第11回「デモと歌とベビーブーム」
文:氷川竜介(アニメ特撮研究家)
1970年にジローズの「戦争を知らない子供たち」というフォークソングがヒットした。中学一年生だった筆者は、つい自分も「戦争を知らない子供」のうちだと思ってしまった。それが大きな勘違いだと悟ったのはずっと後のこと。「団塊の世代」がどういう存在か文化史的に熟考する中で、見えてきたのである。
筆者にはちょうど10歳違いの叔父がいる。彼がまさに「団塊の世代」だ。筆者の父とは18歳違い、7人兄弟の末っ子で、叔父の方が年齢が近いため「兄ちゃん」と呼ばされていた。家庭は貧しかったはずだが、安心感と未来への希望として、もう一子が増えたという好例である。そんな空前のベビーブームが1947年から1949年ごろ。すなわち、太平洋戦争の終結が原因で生まれたのが「団塊の世代」というわけだ。この身近な事例を重ね合わせてよく歌を聞き直すと、「戦争を知らない子供」とはこの世代ピンスポットだと判明する。つまり「戦争が終わったがゆえに生まれた」と、因果が暗に込められている。それが「大人になる(大学から社会人になる)」のが発表年の1970年前後という構造が重要だ。
その時、世界ではいまだに戦争が続いていた。だとしたら、「戦争によって生命をさずかった子」の多くは、より深く考え行動しなければならないと思ったはずだ。それを象徴するソングなのである。この構造を念頭におけば、60年代終盤の若者文化の台頭や学生運動の激化が「当事者」にとってどういうものか、おのずと浮かび上がってくる。『コンレボ』第11話の「ソングと反戦デモ」が混然となる描写も、こうした現実が背後にある。
この年齢構造は、「超人文化」にも深い関わりがある。戦後の漫画雑誌は「戦争が終わって生まれた子供たち」のボリューム感を目当てに創刊が相次ぎ、超人へのあこがれをつかって文化圏を拡大したのだから。彼らが小学生のころ『鉄腕アトム』や『鉄人28号』の連載が始まり『ゴジラ』が大ヒット。小学校高学年の時期には少年週刊誌が創刊され、東京タワーが完成してテレビ文化が勃興、週間単位でのコンテンツ消費が定常化していく。
これをふまえて、今度は「団塊」から10歳若い弟世代に向けた「テレビまんが」が台頭し、超人文化が次の進化へ向かう。すべては「戦争」に絡み、因果が連鎖しているわけだ。それを射程にとらえた『コンレボ』の物語の行き先を見届けたい。