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27 November. 2015

コラム「超人探訪記」第8回「探偵と超人の深い関係」

文:氷川竜介(アニメ特撮研究家)

 第8話では「少年探偵vs怪盗」の対決の中、爾朗の価値観の底流が描かれている。その「探偵もの」とは、超人文化全般のルーツでもある。『スーパーマン』の原作出版社「DCコミック」も「Detective」を冠しているほどで、「怪しい事件を起こして世を乱す者」「謎を解いて平穏を取りもどす者」という対立構造は「超人」の根幹に絡みついている。

 「探偵もの」と言えば、学校図書館でホームズ、ルパンなど海外作品と並ぶ「少年探偵江戸川乱歩全集」(ポプラ社)をご記憶の方も多いだろう。名探偵・明智小五郎と少年探偵団が怪人二十面相の怪事件に挑む著名なシリーズの初出は1936年、戦前の雑誌「少年倶楽部」である。中断期をはさみ、戦後は1949年に雑誌「少年」で連載再開(『鉄腕アトム』と同じ掲載誌)。1950年代には映画で「少年探偵団」がシリーズ化され、以後はラジオやテレビなど放送メディアに幾度となく登場して定番化する。1968年にはアトムの虫プロでも『わんぱく探偵団』としてテレビアニメ化もされた。オリジナルキャラクターで、りんたろう、出崎統たち名演出家が先鋭的映像でモダンにアレンジし、原作にあるBD(Boys Detective)バッジを銃に装填して射出するなど、数々の工夫が凝らされていた。

 「探偵もの」は1953年に誕生したテレビにも影響をあたえた。国産テレビヒーロー第1号『月光仮面』(58)の主人公・祝十郎も探偵で、スーパーマンの要素を加えてスタートしたものであった。ターバン、サングラス、マントという衣装、額の三日月マークは子どもが真似しやすく、乗り物のバイクも自転車に置き換え可能で、大人気となる。第3部「マンモス・コング」では全長15メートルの怪獣をシンプルなミニチュア特撮で表現した。

 原作者の川内康範は月光仮面の正体を「謎」(配役も「?」と出る)として「正義の味方」と位置づけた。そこには「正義」の名のもとに行われた戦争への懐疑がある気がする。正義そのものを体現するスーパーマンとも違う日本ヒーローの独自性であり、警察を助ける「探偵」的でもある。1972年には「懐かし漫画」のブームで、テレビアニメ版『正義を愛する者 月光仮面』がスタート。ヘルメットを装着し、三日月ブーメランなど新武器を使うなどデザインがリファインされた。

 さまざまな観点で、「探偵」とは「超人」を考察する上で、避けて通れない奥深い存在なのである。

第8回「探偵と超人の深い関係」

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